言熟文源録【ことば紀行】

ふっくら熟れたことばの実。そのタネをみつめる旅に、出かけましょう。

新潮文庫

【心をタフにする読書法】佐藤優『功利主義者の読書術』(新潮文庫) #36

読書には、大きな罠がある。特に、読書家といわれる人がその罠に落ちやすい。読書はいわば「他人の頭で考えること」である。従って、たくさんの本を読むうちに、自分の頭で考えなくなってしまう危険性がある。 冒頭からのすっぱ抜きだ。本を無批判に読むのは…

【ドライに紡ぐ物語】スタインベック『ハツカネズミと人間』(新潮文庫) #34

ようこそ、ふぎと屋へ。今日はスタインベック『ハツカネズミと人間』を仕入れたよ。ゆるりとくつろぎながら聞いていってくれ。 ハツカネズミと人間 (新潮文庫) 作者:ジョン スタインベック 発売日: 1994/08/10 メディア: 文庫 戦争と牧歌 手始めに、1937年に…

【乾坤一擲の海洋文学】ヘミングウェイ『老人と海』 #33

ようこそ、「ふぎと屋」へ。きょうはアメリカの海洋文学を仕入れたよ。ひとつ、付き合ってもらっていいかい?…そうだなあ、今回はエドムンド・ウィルソンの話から始めようか。 批評家E.ウィルソン ウィルソンってのはアメリカの批評家さ。法律家の息子として…

【文学という犯罪】安部公房『壁』(新潮文庫) #26

どーも、ふぎとです。今日は安部公房『壁』(新潮文庫)を紹介するよ。 壁 (新潮文庫) 作者:公房, 安部 発売日: 1969/05/20 メディア: 文庫 作品紹介 これはいったい何なのか。奪われた名前、闊歩する名刺、胸に取り込んだ荒野、主客の転倒、バベルの塔。いや…

【ドノ事ソノ事を探す旅】塩野七生『チェーザレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷』(新潮文庫) #20

どーも、ふぎとです。今日は塩野七生『チェーザレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷』(新潮文庫)を紹介するよ。 チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷 (新潮文庫) 作者:七生, 塩野 発売日: 1982/09/28 メディア: 文庫 作品紹介 「尾張の大うつけ」織田信…

【グルグル魔人とアルマゲドン】舞城王太郎『阿修羅ガール』(新潮文庫) #16

どーも、ふぎとです。今日は舞城王太郎『阿修羅ガール』(新潮文庫)を紹介するよ。 阿修羅ガール (新潮文庫) 作者:王太郎, 舞城 発売日: 2005/04/24 メディア: 文庫 作品紹介 コロナコロナと言っていて、マスクマスクと騒いでいたらいつのまにか1週間が経っ…

【誰がゲルニカを描いたのか】原田マハ『暗幕のゲルニカ』(新潮文庫) #14

どーも、ふぎとです。今日は原田マハ『暗幕のゲルニカ』を紹介するよ。 暗幕のゲルニカ (新潮文庫) 作者:マハ, 原田 発売日: 2018/06/28 メディア: 文庫 作品紹介 2001年。ニューヨークの現代美術館(MoMA)で働く瑶子は、来る「ピカソ展」に向けた準備に携わ…

【"感じかた"の提案】吉本ばなな『キッチン』(新潮文庫) #13

どーも、ふぎとです。今日は吉本ばなな『キッチン』を紹介するよ。 キッチン (新潮文庫) 作者:ばなな, 吉本 発売日: 2002/06/28 メディア: 文庫 作品紹介 今は昨日よりも少し楽に息ができる。また息もできない孤独な夜が来るに違いないことは確かに私をうん…

【御免状はどこだ】隆慶一郎『吉原御免状』(新潮文庫)

どーも、ふぎとです。 今日は隆慶一郎『吉原御免状』を紹介するよ。 作品・著者紹介 明歴3年(1657)、浅草日本堤から江戸を見渡す男の姿があった。名は、松永誠一郎。「26になったら江戸に行き、吉原の庄司甚右衛門を訪ねよ」という師-宮本武蔵政名-の遺言…

【2回は読める離散小説】法条遥『忘却のレーテ』(新潮文庫)読んでみた

どーも、ふぎとです。今日は法条遥『忘却のレーテ』を紹介するよ。 忘却のレーテ(新潮文庫) 作者:法条 遥 発売日: 2015/10/23 メディア: Kindle版 誰でも、忘れたいことがある。忘れたくても、忘れられないことがある。では、「忘却薬」を処方されたら、…