【御免状はどこだ】隆慶一郎『吉原御免状』(新潮文庫)
どーも、ふぎとです。
作品・著者紹介
明歴3年(1657)、浅草日本堤から江戸を見渡す男の姿
があった。名は、松永誠一郎。「26になったら江戸に行
き、吉原の庄司甚右衛門を訪ねよ」という師-宮本武蔵
政名-の遺言を果たすため、肥後の山中からやってきた
のである。
彼は花街にあるまじき殺気に戸惑いながらも、庄司の
店だという西田屋までたどりつく。しかし、そこで告げ
られたのは、「甚右衛門は死んだ」という一報だった。
途方に暮れて西田屋を出た誠一郎を、謎の刺客たちが
襲う。どうも、彼にとっては耳覚えがない「神君御免状」
なる書状が関係しているらしい。かの武蔵に鍛えられた
誠一郎は、難なく刺客たちを斬って落とす。しかしその
後、誠一郎の周りで事態が次々と出来しはじめる。消え
た死体、「幻斎」を名乗る謎の老人、読心の能をもった
少女、陽に暗に誠一郎をつけ狙う勢力...。
当時の江戸の事情解説も交えながら、この歴史小説は
ラストまで進んでいく。ぼくが面白いと感じたのは、歴
史の異説を大胆に取り込みながらも、小説としての全体
が破綻していない点だ。例えば、後年の家康に側近とし
て仕えた天海僧正は、かの明智光秀だという説。そして
その家康は...おっと、ネタばらしはここまでにしよう。
著者の隆慶一郎は、1923年の生まれ。この『吉原御
免状』が作家としての処女作だ。徹底的に資料を読み込
んで書くというスタイルが、本書の後記からも伝わって
くる。
この本をオススメしたい人
・歴史小説好きの人
・謎が解ける快感を味わいたい人
それでは今日はこの辺で。ふぎとでした。