言熟文源録【ことば紀行】

ふっくら熟れたことばの実。そのタネをみつめる旅に、出かけましょう。

2021-02-01から1ヶ月間の記事一覧

吉本ばなな『スウィート・ヒアアフター』(幻冬舎文庫)#53

ひそやかな鎮魂・ささやかなエール 同じように聞こえているけれど、子どもたちはきっと同じではない、卒業したり入学したりして、確実に入れ替わっているのだ。私の細胞もきっとあのときとは違ってほとんど入れ替わっている。だから今は今なんだ。そう思った…

多和田葉子『エクソフォニー』(岩波現代文庫)#52

副題「母語の外へ出る旅」 「エクソフォニー」ってなんだろう。ぼくがこの本を手に取ったときの最初の「?」はそこだった。 これまでも「移民文学」とか「クレオール文学」というような言葉はよく聞いたが、「エクソフォニー」はもっと広い意味で、母語の外…