言熟文源録【ことば紀行】

ふっくら熟れたことばの実。そのタネをみつめる旅に、出かけましょう。

【天からのギフト】恩田陸『蜜蜂と遠雷』(幻冬舎文庫)読んでみた


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どーも、ふぎとです。
今日は恩田陸蜜蜂と遠雷』(幻冬舎文庫)を紹介するよ。

蜜蜂と遠雷(上) (幻冬舎文庫)

蜜蜂と遠雷(上) (幻冬舎文庫)


読んだきっかけ


この本との出会いは、最初は本屋でした。でもその時は
そんなに惹かれませんでした。「なんかオシャレなカバ
ーやなあ」と、それだけ。でも後日、見てしまったんで
す。文学ユーチューバー、ベルさんの書評動画を。

https://youtu.be/TVnsY2zlpfs


これで万事が一挙に出来(しゅったい)。いまここに到り
ます。笑


あらすじと感想


嵯峨三枝子はプロの演奏家。国際ピアノの審
査員としても名を連ねる彼女は、パリ予選での審査にあ
たっていた。「今年はあまり目立った才能がない」と落
胆しかけていた三枝子の前に、ひとりの少年が現れる。
それも、先日亡くなった至高の音楽家、ホフマンの紹介
状とともに…

 


皆さんに、カザマ・ジンをお贈りする。文字通り、
彼は『ギフト』である。恐らくは、天から我々への。
だが、勘違いしてはいけない。試されているのは彼
ではなく、私であり、皆さんなのだ。彼を『体験』
すればお分かりになるだろうが、彼は決して甘い恩
寵などではない。彼は劇薬なのだ。中には彼を嫌悪
し、憎悪し、拒絶する者もいるだろう。しかし、そ
れもまた彼の真実であり、彼を『体験』する者の中
にある真実なのだ。彼を本物の『ギフト』とするか、
それとも『災厄』にしてしまうのかは、皆さん、い
や、我々にかかっている。


ユウジ・フォン=ホフマン

 


予選を勝ち上がったジンは、色んな思いを持ち同じく予
選を突破してきたコンテスタントたちと出会ってゆく。
母の死をきっかけに、かつて突如演奏活動を断った天才、
栄伝亜夜。ピアノを始める理由をくれた少女の面影を追
マサル。各々が熾烈に争うコンテストという場にあり
ながらも、彼らは次第に親交を深めてゆく。


...


はい、こんな感じのお話です。僕がすごいと思ったのが、
「ピアノで演奏する」「音楽する」という行為を言葉だ
けで表現している点。弾いているコンテスタントの心象
風景、それを聴いた人が受けた感動がリアルな「触感」
をもって伝わってきます。


蜜蜂と遠雷(上) (幻冬舎文庫)

蜜蜂と遠雷(上) (幻冬舎文庫)


著者の恩田陸さんは1964年、青森の生まれ。ファンタジ
ーノベル『六番目の小夜子』でデビューすると、『夜の
ピクニック』で吉川英治文学新人賞、『中庭の出来事』
山本周五郎賞を受賞。さらにこの『蜜蜂と遠雷』では
直木賞に輝いています。


幼い頃からクラシックに親しみ、早稲田大学在学中はオ
ーケストラでサックスを吹いていた恩田さんはしかし、
本作を書き上げる上で大変苦労されたそう。担当編集者
の志儀さんは、『蜜蜂』の連載を始めた際に、恩田さん
から届いたメールを紹介しています。


志儀様昨日はすみませんでした。行き詰まった上に
ここんとこ二日くらい寝ていなかったので最高に気
分が悪くなり気絶。ようやくできました。もうデッ
ドライン過ぎてますでしょうが何卒何卒よろしくお
願いします。やはり音楽小説むつかしいです。先が
思いやられます。恩田陸
(『蜜蜂と遠雷』解説より)


血反吐を吐くような思いをしながら書かれた本作。その
苦労の分、めちゃめちゃ面白い小説になってます。クラ
シック好きでない人にもオススメです。というより今ま
で音楽にあまり触れてこなかった人にぜひ読んでほしい
1冊です。


蜜蜂と遠雷(上) (幻冬舎文庫)

蜜蜂と遠雷(上) (幻冬舎文庫)


ではでは、今日はこの辺で。ふぎとでした。


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