【人生に甦る】ディケンズ『二都物語』(新潮文庫)読んでみた
どーも、ふぎとです。
今日はディケンズ『二都物語』(新潮文庫)をご紹介。
「"ドーヴァーにて令嬢(マドモアゼル)を待て"。ほ
ら、長くないだろう、車掌殿。そしてジェリー、
私の返事は"人生に甦った"だ」
18世紀、革命の足音きこえるヨーロッパ。無実の罪によ
りバスティーユに囚われたマネット医師。その愛娘、ル
ーシー。イギリスへ亡命したフランス貴族、ダーネイ。
人生に絶望した弁護士、カートン。舞台と役者はこのよ
うに。吹き荒れますは革命の嵐。時代に翻弄される4人
はしかし、おもむろに「人生に甦って」ゆく-。
......
『デービッド・コパフィールド』や『クリスマス・キャ
ロル』でも知られる、ベストセラー作家ディケンズ。彼
の生い立ちはしかし、恵まれたものではなかったようで
す。
"ディケンズは、(中略)下級官吏の長男として1812年
2月7日に生まれ、子どものときから貧乏の苦しみ
をなめ尽くし、大英帝国の首都ロンドンの栄光と繁
栄の裏にひそむ悲惨を身をもって知った。弱者がこ
うむる社会的不公平、金がものを言う世界が人間精
神に及ぼす悪影響を幼い目で眺めた彼は、作家にな
ってからそれを鋭い筆で描き、一般読者に痛烈に訴
えた。このようにして若くして社会改革の意識に染
まったが,一方では立身出世を目ざして猛烈に働く
典型的ビクトリア朝イギリス人でもあった。小学校
程度の教育をやっと身につけると、あとはすべて独
力で生活の資を稼ぎ、法律事務所の走使い、速記者、
新聞記者としだいに社会の階段を登り、わずかな余
暇は図書館での勉強と芝居見物に費やした。"
(平凡社『世界大百科事典』より)
なんだか「沖仲仕の哲学者」、エリック・ホッファーを
彷彿とさせるものがあります。とにかくコツコツと知識
と実績を積み上げていった努力家。この作品では、その
研鑽が見事な「映画的描写」として現れている気がしま
す。
"たとえば、幕開けの馬車の一行を包みこむ生き物の
ような霧や、道にこぼれたワインを貪るように飲む
人々、あるいは、群衆を畑に見立てて囚人護送車が
畝を作っていくたとえ。"
(「訳者あとがき」より)
それでは今日はこの辺で。ふぎとでした。