言熟文源録【ことば紀行】

ふっくら熟れたことばの実。そのタネをみつめる旅に、出かけましょう。

『本―TAKEO PAPER SHOW 2011』(平凡社) #47

f:id:fugithora812:20200921085614j:plain 9月下旬の4連休、ぽつぽつと雨が降ってきそうな曇りの日に、JR八王子から京王八王子へと向かう道沿いのBOOKOFFで気になる本を見つけた。「本」の名を冠した本。その浩瀚さ、装丁の独特さに惹かれてふと手に取った。

表紙にはこうある。

紙に定着された「物体としての本」の魅力を伝えるコンセプトブック。
本と人との関わりをビジュアルで綴る「人間と本」。
識者78名が選んだ本と、エッセイ78本。
紙の本の未来と、本のデザインの可能性を展望する。

ぼくのような「蔵書家」には、なんとも好奇心をくすぐられる文章だ。じゃあ「識者78名」って誰なのか。そう思ってみてみると、『マチネの終わりに』の平野啓一郎、編集工学の松岡正剛、講談社現代新書のデザインを手がけていた杉浦康平など錚々たるメンバーだ。迷わず購入した。

この記事を書くまで知らなかったのだが、竹尾ペーパーショウという「紙の祭典」があるらしい。紙の専門商社である株式会社竹尾が主宰している。そしてこの『本』の刊行は、「紙の本の可能性を拓く」というコンセプトで開催された2011年の目玉であったという。要するにいま、本書を新しく手に入れられるということは、皆既日食ぐらいレアなのだ。これもまた、自分にとっての「珠玉の一冊」になりそうだ。

ところで本書を持ち帰ってみて気が付いた。本棚の1段より微妙に大きいのだ。まあ、こんなことはよくあることだ。飽きるまで机の隅に飾ることにした。矯めつ眇めつ、ながめて楽しむ日々が続きそうだ。