言熟文源録【ことば紀行】

ふっくら熟れたことばの実。そのタネをみつめる旅に、出かけましょう。

【ながい午後をゆく】B.W.オールディス『地球の長い午後』(ハヤカワ文庫) #12


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どーも、ふぎとです。
今日はB.W.オールディス『地球の長い午後』を紹介するよ。


作品紹介


 1人の読み手として、作家の想像力・描写力に畏怖の
念を覚えることがある。本書は、正に作家が「想像力の
限界」に挑んだ跡が垣間見える、凄みのある作品だった。


 舞台は、はるか未来の地球。そこでは、この惑星はす
でに自転を止め、太陽の爆発により滅ぶまでの間の「長
い午後」が訪れている。ずっと昼間なのである。動物は
殆どの種が絶滅した。背が縮み、肌が緑色となったヒト
のほか、生き延びているのは10種にも満たない。
 動物たちに代わって、地上に台頭したのは植物だった。
彼らは植物らしい、気長な努力をもって、かつての蜘蛛
の姿を模倣して空に巣を作ったり、自律的に種子を運ん
だりと、独自の進化を遂げた。この世界を、読者は複数
の人物の視点を借りて旅することになる。


 本作品は1962年に、優れたSF・ファンタジー長篇に贈
られる、ヒューゴー賞を受賞した。言わばSFの古典的傑
作だ。また、訳者はあとがきで、架空の生物の訳出に苦
しんだと語っている。こうした苦労に思いを馳せながら
読むのも面白いかもしれない。


著者紹介:B.W.オールディス


 イギリスのSF作家。J・G・バラードと並ぶSFニュー・
ウェーブの旗手。作家兼評論家兼アンソロジストで活躍
の幅が広い。SFを書き始めたのは1954年からで、ヒュ
ーゴー賞受賞の代表的長編『地球の長い午後』(1962)
や、『子供の消えた惑星』(1964)は、ペシミズムを基
調とした斬新(ざんしん)な手法で地球の終末を描いた
作品である。また『十億年の宴(うたげ)』(1973)と
続編『一兆年の宴』(1986)は彼が卓越した評論家であ
ることを立証した労作で、最良のSF史として定評がある。
精神的なタイム・トラベルをテーマにした『隠生代』(1
967)、短編集『ありえざる星』(1965)など、著作の
数は30冊近い。(小学館日本大百科全書』より)

 


第二次大戦で志願兵として東南アジアやインドの通信隊
に所属 [1943-47] .除隊後,雑誌に寄稿を始め,《ノン・
ストップ:Non-stop, 1958》以降,宇宙船の消失,ユー
トピア世界の危機,タイム・ワープなど,SFの古典的な
設定を用いた作品が多い.英国SF協会の初代会長を務め
 [60-64] ,数多くの長編,短編集のほか,SFに関する優
れた評論も著した.


〖著作〗 地球の長い午後:Hothouse, 1962.Helliconia
 spring, 1982.Dracula unbound, 1991(以上,小説).
Space, time and Nathaniel, 1957(短編集).This world 
and nearer ones, 1979.The pale shadow of science, 
1985.一兆年の宴:Trillion year spree, 1986(以上,評論).
(岩波書店『世界人名大辞典』より)

 


この本をオススメしたい人

・SF好きの人
・「未来の地球」を空想したい人
・本格的なSFにチャレンジしたい人

 

 


ではでは今日はこの辺で。ふぎとでした。