言熟文源録【ことば紀行】

ふっくら熟れたことばの実。そのタネをみつめる旅に、出かけましょう。

小説

【現実 VS 幻想】フィリップ・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』 #45

この記事から学べること 『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』はどんな小説か 小説を通してディックが考えたかったことは何か ディックが晩年惹かれた「クムラン教団」とは 死の灰が降り注ぐ 第3次世界大戦後、地球。惑星全体が生命を遺伝子レベルで汚染…

【コロナと仏性】幸田露伴『風流仏』 #41

この記事から学べること 『風流仏』とはどんな物語か 露伴が表現したかった思想 幸田露伴の生い立ち はかない風流・永遠の仏性 明治文学の大家、幸田露伴の出世作だ。尾崎紅葉『二人比丘尼色懺悔』に続く形で「新著百種」第5号として発刊された。1889年のこ…

【現代小説の起源】二葉亭四迷『浮雲』(岩波文庫) #37

この記事から学べる事 明治の文豪、二葉亭四迷の生い立ち 四迷が育ったころの社会情勢 四迷の「芸術観」 危険な読書 先日ちょっとした縁があり、昭和44年に集英社から刊行された『日本文学全集』を我が家に引き受けた。全巻88冊がずらっと居並ぶ姿が圧巻だ。…

選書ブロガーが選ぶ!2020年上半期ベスト3

どーも、「選書ブロガー」のふぎとです!普段の記事は常体(だ・である調)ですが、今回は敬体(です・ます調)で書きたいと思います。 さてさて、今年の初めから「選書ブロガー」として筆をとってきて、色んなジャンルの本を読んで、紹介してきたわけなのですが…

【ドライに紡ぐ物語】スタインベック『ハツカネズミと人間』(新潮文庫) #34

ようこそ、ふぎと屋へ。今日はスタインベック『ハツカネズミと人間』を仕入れたよ。ゆるりとくつろぎながら聞いていってくれ。 ハツカネズミと人間 (新潮文庫) 作者:ジョン スタインベック 発売日: 1994/08/10 メディア: 文庫 戦争と牧歌 手始めに、1937年に…

【乾坤一擲の海洋文学】ヘミングウェイ『老人と海』 #33

ようこそ、「ふぎと屋」へ。きょうはアメリカの海洋文学を仕入れたよ。ひとつ、付き合ってもらっていいかい?…そうだなあ、今回はエドムンド・ウィルソンの話から始めようか。 批評家E.ウィルソン ウィルソンってのはアメリカの批評家さ。法律家の息子として…

【時代を観察する】なかにし礼『戦場のニーナ』(講談社文庫) #32

どーも、ふぎとです。今日はなかにし礼『戦場のニーナ』を紹介するよ。 戦場のニーナ (講談社文庫) 作者:なかにし礼 発売日: 2019/12/20 メディア: Kindle版 作品紹介 最近、ロシアに出会うことが多い。というのも、書店でパッと手に取った本がロシアやソ連…

【生きたロボットを止める?】森博嗣『魔法の色を知っているか?』(講談社タイガ) #28

どーも、ふぎとです。今日は森博嗣『魔法の色を知っているか?』を紹介するよ。 魔法の色を知っているか? What Color is the Magic? Wシリーズ (講談社タイガ) 作者:森博嗣 発売日: 2016/01/19 メディア: Kindle版 作品紹介 最近のAI技…

【物語を食べて生きる】米原万里『オリガ・モリソヴナの反語法』(集英社文庫) #27

どーも、ふぎとです。今日は米原万里『オリガ・モリソヴナの反語法』を紹介するよ。 オリガ・モリソヴナの反語法 (集英社文庫) 作者:米原 万里 発売日: 2005/10/20 メディア: 文庫 作品紹介 「生まれたての小鳥の雛は、初めて見たものを親だと思ってついてい…

【文学という犯罪】安部公房『壁』(新潮文庫) #26

どーも、ふぎとです。今日は安部公房『壁』(新潮文庫)を紹介するよ。 壁 (新潮文庫) 作者:公房, 安部 発売日: 1969/05/20 メディア: 文庫 作品紹介 これはいったい何なのか。奪われた名前、闊歩する名刺、胸に取り込んだ荒野、主客の転倒、バベルの塔。いや…

【文体という兵器】伊藤計劃『虐殺器官』(ハヤカワ文庫) #25

どーも、ふぎとです。今日は伊藤計劃『虐殺器官』(ハヤカワ文庫)を紹介するよ。 虐殺器官〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA) 作者:伊藤計劃 発売日: 2014/08/08 メディア: 文庫 作品紹介 小説を批評するとき、「文体」ということが取り沙汰されることがある。小学館…

【長編的な何か】円城塔『self-Reference ENGINE』(ハヤカワ文庫) #23

どーも、ふぎとです。今日は円城塔『self-Reference ENGINE』(ハヤカワ文庫)を紹介するよ。 Self-Reference ENGINE 作者:円城 塔 発売日: 2013/11/15 メディア: Kindle版 作品紹介 無限に広がる平面。その地表には、無限の数の人間が暮らしている。 "イベ…

【妖怪モヤモヤ】京極夏彦『姑獲鳥の夏』(講談社文庫) #19

どーも、ふぎとです。今日は京極夏彦『姑獲鳥の夏』を紹介するよ。 文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫) 作者:京極 夏彦 発売日: 1998/09/14 メディア: 文庫 作品紹介 すべての読書を「スッキリする読書」と「モヤモヤする読書」に分けるとすると、ぼくのなかで…

【6000人一斉自殺】伊藤計劃『ハーモニー』(早川書房) #18

どーも、ふぎとです。今日は伊藤計劃『ハーモニー』を紹介するよ。 ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA) 作者:伊藤計劃 発売日: 2014/08/08 メディア: 文庫 作品紹介 Lifism―生命至上主義。2019年に発生した核兵器の散発的な使用は、人類の健康危機を引き…

【負を転がしてくれる鹿】黒木渚『壁の鹿』(講談社文庫) #17

どーも、ふぎとです。今日は黒木渚『壁の鹿』を紹介するよ。 壁の鹿 (講談社文庫) 作者:黒木 渚 発売日: 2017/04/14 メディア: 文庫 作品紹介 鹿の剥製が最初に話した言葉は、「まったく、理解不能です」というものだった。 高校二年の冬、あの懐かしい書斎…

【グルグル魔人とアルマゲドン】舞城王太郎『阿修羅ガール』(新潮文庫) #16

どーも、ふぎとです。今日は舞城王太郎『阿修羅ガール』(新潮文庫)を紹介するよ。 阿修羅ガール (新潮文庫) 作者:王太郎, 舞城 発売日: 2005/04/24 メディア: 文庫 作品紹介 コロナコロナと言っていて、マスクマスクと騒いでいたらいつのまにか1週間が経っ…

【誰がゲルニカを描いたのか】原田マハ『暗幕のゲルニカ』(新潮文庫) #14

どーも、ふぎとです。今日は原田マハ『暗幕のゲルニカ』を紹介するよ。 暗幕のゲルニカ (新潮文庫) 作者:マハ, 原田 発売日: 2018/06/28 メディア: 文庫 作品紹介 2001年。ニューヨークの現代美術館(MoMA)で働く瑶子は、来る「ピカソ展」に向けた準備に携わ…

【"感じかた"の提案】吉本ばなな『キッチン』(新潮文庫) #13

どーも、ふぎとです。今日は吉本ばなな『キッチン』を紹介するよ。 キッチン (新潮文庫) 作者:ばなな, 吉本 発売日: 2002/06/28 メディア: 文庫 作品紹介 今は昨日よりも少し楽に息ができる。また息もできない孤独な夜が来るに違いないことは確かに私をうん…

【ながい午後をゆく】B.W.オールディス『地球の長い午後』(ハヤカワ文庫) #12

どーも、ふぎとです。今日はB.W.オールディス『地球の長い午後』を紹介するよ。 地球の長い午後 (ハヤカワ文庫 SF 224) 作者:ブライアン W.オールディス 発売日: 1977/01/28 メディア: 文庫 作品紹介 1人の読み手として、作家の想像力・描写力に畏怖の念を…

【御免状はどこだ】隆慶一郎『吉原御免状』(新潮文庫)

どーも、ふぎとです。 今日は隆慶一郎『吉原御免状』を紹介するよ。 作品・著者紹介 明歴3年(1657)、浅草日本堤から江戸を見渡す男の姿があった。名は、松永誠一郎。「26になったら江戸に行き、吉原の庄司甚右衛門を訪ねよ」という師-宮本武蔵政名-の遺言…

【2回は読める離散小説】法条遥『忘却のレーテ』(新潮文庫)読んでみた

どーも、ふぎとです。今日は法条遥『忘却のレーテ』を紹介するよ。 忘却のレーテ(新潮文庫) 作者:法条 遥 発売日: 2015/10/23 メディア: Kindle版 誰でも、忘れたいことがある。忘れたくても、忘れられないことがある。では、「忘却薬」を処方されたら、…