言熟文源録【ことば紀行】

ふっくら熟れたことばの実。そのタネをみつめる旅に、出かけましょう。

2020-01-01から1年間の記事一覧

【観天望気のシングルマザー】川端裕人『雲の王』(集英社文庫) #29

どーも、ふぎとです。今日は川端裕人『雲の王』(集英社文庫)を紹介するよ。 雲の王 (集英社文庫) 作者:川端 裕人 発売日: 2015/07/17 メディア: 文庫 作品紹介 「共感覚」という言葉がある。これは五感のいずれかから刺激を受け取ったときに、別の感官も刺激…

【生きたロボットを止める?】森博嗣『魔法の色を知っているか?』(講談社タイガ) #28

どーも、ふぎとです。今日は森博嗣『魔法の色を知っているか?』を紹介するよ。 魔法の色を知っているか? What Color is the Magic? Wシリーズ (講談社タイガ) 作者:森博嗣 発売日: 2016/01/19 メディア: Kindle版 作品紹介 最近のAI技…

【物語を食べて生きる】米原万里『オリガ・モリソヴナの反語法』(集英社文庫) #27

どーも、ふぎとです。今日は米原万里『オリガ・モリソヴナの反語法』を紹介するよ。 オリガ・モリソヴナの反語法 (集英社文庫) 作者:米原 万里 発売日: 2005/10/20 メディア: 文庫 作品紹介 「生まれたての小鳥の雛は、初めて見たものを親だと思ってついてい…

【文学という犯罪】安部公房『壁』(新潮文庫) #26

どーも、ふぎとです。今日は安部公房『壁』(新潮文庫)を紹介するよ。 壁 (新潮文庫) 作者:公房, 安部 発売日: 1969/05/20 メディア: 文庫 作品紹介 これはいったい何なのか。奪われた名前、闊歩する名刺、胸に取り込んだ荒野、主客の転倒、バベルの塔。いや…

【文体という兵器】伊藤計劃『虐殺器官』(ハヤカワ文庫) #25

どーも、ふぎとです。今日は伊藤計劃『虐殺器官』(ハヤカワ文庫)を紹介するよ。 虐殺器官〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA) 作者:伊藤計劃 発売日: 2014/08/08 メディア: 文庫 作品紹介 小説を批評するとき、「文体」ということが取り沙汰されることがある。小学館…

【意味で捉えなおす歴史】川北稔『世界システム論講義』(ちくま学芸文庫) #24

どーも、ふぎとです。 今日は川北稔『世界システム論講義』(ちくま学芸文庫) を紹介するよ。 世界システム論講義: ヨーロッパと近代世界 (ちくま学芸文庫) 作者:川北 稔 発売日: 2016/01/07 メディア: 文庫 作品紹介 突然だが、近代世界システム論という言…

【長編的な何か】円城塔『self-Reference ENGINE』(ハヤカワ文庫) #23

どーも、ふぎとです。今日は円城塔『self-Reference ENGINE』(ハヤカワ文庫)を紹介するよ。 Self-Reference ENGINE 作者:円城 塔 発売日: 2013/11/15 メディア: Kindle版 作品紹介 無限に広がる平面。その地表には、無限の数の人間が暮らしている。 "イベ…

【持続可能な復元力】ローワン・ジェイコブセン『ハチはなぜ大量死したのか』(中里京子 訳、文春文庫) #22

どーも、ふぎとです。今日はローワン・ジェイコブセン『ハチはなぜ大量死したのか』を紹介するよ。 ハチはなぜ大量死したのか (文春文庫) 作者:ローワン ジェイコブセン 発売日: 2011/07/08 メディア: 文庫 作品紹介 産業革命以降、人類は経済を発達させ先進…

【エイリアン探索】マーク・カウフマン『地球外生命を求めて』(奥田裕士 訳、DISCOVERサイエンス) #21

どーも、ふぎとです。今日はマーク・カウフマン『地球外生命を求めて』を紹介するよ。 地球外生命を求めて (Dis+Cover Science) 作者:マーク・カウフマン 発売日: 2011/09/16 メディア: 新書 作品紹介 地球上で、「最初の生命」はどのように生まれたのか。こ…

【ドノ事ソノ事を探す旅】塩野七生『チェーザレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷』(新潮文庫) #20

どーも、ふぎとです。今日は塩野七生『チェーザレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷』(新潮文庫)を紹介するよ。 チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷 (新潮文庫) 作者:七生, 塩野 発売日: 1982/09/28 メディア: 文庫 作品紹介 「尾張の大うつけ」織田信…

【妖怪モヤモヤ】京極夏彦『姑獲鳥の夏』(講談社文庫) #19

どーも、ふぎとです。今日は京極夏彦『姑獲鳥の夏』を紹介するよ。 文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫) 作者:京極 夏彦 発売日: 1998/09/14 メディア: 文庫 作品紹介 すべての読書を「スッキリする読書」と「モヤモヤする読書」に分けるとすると、ぼくのなかで…

【6000人一斉自殺】伊藤計劃『ハーモニー』(早川書房) #18

どーも、ふぎとです。今日は伊藤計劃『ハーモニー』を紹介するよ。 ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA) 作者:伊藤計劃 発売日: 2014/08/08 メディア: 文庫 作品紹介 Lifism―生命至上主義。2019年に発生した核兵器の散発的な使用は、人類の健康危機を引き…

【負を転がしてくれる鹿】黒木渚『壁の鹿』(講談社文庫) #17

どーも、ふぎとです。今日は黒木渚『壁の鹿』を紹介するよ。 壁の鹿 (講談社文庫) 作者:黒木 渚 発売日: 2017/04/14 メディア: 文庫 作品紹介 鹿の剥製が最初に話した言葉は、「まったく、理解不能です」というものだった。 高校二年の冬、あの懐かしい書斎…

【グルグル魔人とアルマゲドン】舞城王太郎『阿修羅ガール』(新潮文庫) #16

どーも、ふぎとです。今日は舞城王太郎『阿修羅ガール』(新潮文庫)を紹介するよ。 阿修羅ガール (新潮文庫) 作者:王太郎, 舞城 発売日: 2005/04/24 メディア: 文庫 作品紹介 コロナコロナと言っていて、マスクマスクと騒いでいたらいつのまにか1週間が経っ…

【もうひとつの非常事態】楡周平『ガリバー・パニック』(講談社文庫) #15

どーも、ふぎとです。今日は楡周平『ガリバー・パニック』(講談社文庫)を紹介するよ。 ガリバー・パニック (講談社文庫) 作者:楡 周平 メディア: 文庫 作品紹介 7日、首相は非常事態を正式に宣言した。これで状況はひとつ次のフェーズへ進んだように思われ…

【誰がゲルニカを描いたのか】原田マハ『暗幕のゲルニカ』(新潮文庫) #14

どーも、ふぎとです。今日は原田マハ『暗幕のゲルニカ』を紹介するよ。 暗幕のゲルニカ (新潮文庫) 作者:マハ, 原田 発売日: 2018/06/28 メディア: 文庫 作品紹介 2001年。ニューヨークの現代美術館(MoMA)で働く瑶子は、来る「ピカソ展」に向けた準備に携わ…

【"感じかた"の提案】吉本ばなな『キッチン』(新潮文庫) #13

どーも、ふぎとです。今日は吉本ばなな『キッチン』を紹介するよ。 キッチン (新潮文庫) 作者:ばなな, 吉本 発売日: 2002/06/28 メディア: 文庫 作品紹介 今は昨日よりも少し楽に息ができる。また息もできない孤独な夜が来るに違いないことは確かに私をうん…

【ながい午後をゆく】B.W.オールディス『地球の長い午後』(ハヤカワ文庫) #12

どーも、ふぎとです。今日はB.W.オールディス『地球の長い午後』を紹介するよ。 地球の長い午後 (ハヤカワ文庫 SF 224) 作者:ブライアン W.オールディス 発売日: 1977/01/28 メディア: 文庫 作品紹介 1人の読み手として、作家の想像力・描写力に畏怖の念を…

【御免状はどこだ】隆慶一郎『吉原御免状』(新潮文庫)

どーも、ふぎとです。 今日は隆慶一郎『吉原御免状』を紹介するよ。 作品・著者紹介 明歴3年(1657)、浅草日本堤から江戸を見渡す男の姿があった。名は、松永誠一郎。「26になったら江戸に行き、吉原の庄司甚右衛門を訪ねよ」という師-宮本武蔵政名-の遺言…

【2回は読める離散小説】法条遥『忘却のレーテ』(新潮文庫)読んでみた

どーも、ふぎとです。今日は法条遥『忘却のレーテ』を紹介するよ。 忘却のレーテ(新潮文庫) 作者:法条 遥 発売日: 2015/10/23 メディア: Kindle版 誰でも、忘れたいことがある。忘れたくても、忘れられないことがある。では、「忘却薬」を処方されたら、…

「花柳界」はなぜ「花」と「柳」なの?

どーも、ふぎとです。今日は「花柳界」についての小ネタです。 小学館の『デジタル大辞泉』を見てみると、「花柳界」は「芸者や遊女の社会。遊里。花柳の巷(ちまた)」と説明されています。しかし、そんな芸者・遊女の社会がなぜ「花」と「柳」で表されてい…

【「使う」読書へ】藤井孝一『読書は「アウトプット」が99%』(知的生きかた文庫)読んでみた

どーも、ふぎとです。今日は藤井孝一『読書は「アウトプット」が99%』を紹介するよ。 ......この本に出会ったのは、最寄りの「ブックオフ」だった。丁度、自分が「今のインプット偏重型読書を続けていると、ただの『オタク』になってしまう」と感じている時…

【ヘンとふつうの相対化】村田沙耶香『コンビニ人間』(文春文庫)読んでみた

どーも、ふぎとです。 今日は村田沙耶香『コンビニ人間』を紹介するよ。 …… ぼくがこの本に巡り合ったのは、自宅の最寄にある書 店だった。さくっとした小説が読みたい気分だったので、 160ページほどの本作を購入。 さてこの本作、主人公はコンビニでアルバ…

【禍福は門なし】呉兢『貞観政要』(ちくま学芸文庫)読んでみた

どーも、ふぎとです。今日は呉兢『貞観政要』を紹介するよ。 貞観政要 (ちくま学芸文庫) 作者:呉兢 発売日: 2018/01/26 メディア: Kindle版 この本を知ったきっかけは「ダ・ヴィンチニュース」の記事でした。僕にとっては『哲学と宗教』でおなじみ、ライフネ…

【天からのギフト】恩田陸『蜜蜂と遠雷』(幻冬舎文庫)読んでみた

どーも、ふぎとです。今日は恩田陸『蜜蜂と遠雷』(幻冬舎文庫)を紹介するよ。 蜜蜂と遠雷(上) (幻冬舎文庫)作者:恩田 陸出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2019/04/10メディア: 文庫読んだきっかけ この本との出会いは、最初は本屋でした。でもその時はそんな…

【人生に甦る】ディケンズ『二都物語』(新潮文庫)読んでみた

どーも、ふぎとです。今日はディケンズ『二都物語』(新潮文庫)をご紹介。 二都物語 (新潮文庫) 作者:チャールズ ディケンズ 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2014/05/28 メディア: 文庫 「"ドーヴァーにて令嬢(マドモアゼル)を待て"。ほら、長くないだろう…

YouTubeの誘惑に勝ちたい話

どーも、ふぎとです。「さすらいの読書人」として、本の紹介を中心に日々記事を書いてる僕ですが、読書をする時の天敵が最近できてしまいました。 そう、YouTubeです。 最近のYouTubeって、ホントに面白いと思いませんか?お気に入りのYouTuberさんとか見つ…

「滑稽」が現代アートのキーワード?

どーも、ふぎとです。 今日は、分かりにくい「現代アート」たちの観かたについて、アイデアを語ってみようと思います。 結論を先にいうと、「その作品がどんな風に"滑稽"なのか、考えながら観るのはどうでしょう?」という話です。 というか、今では「おか…

広辞苑をパッとあけてまだ見ぬ日本語と出会ってみる

↑圧倒的存在感。 どーも、ふぎとです。 前回、増井元さんの『辞書の仕事』(岩波新書)を紹介 した折、この企画を思い付いたのでやってみました。 内容は極めてシンプル。 「えいっ」と広辞苑をひらく 目に止まった「まだ見ぬ日本語」を紹介する これだけです…

【ことばを訪ねる旅】増井元『辞書の仕事』(岩波新書)を読んでみた

―今日は「ふぎと屋」のふぎとさんが、増井元さんの『辞書の仕事』を読んだということで、感想をうかがいたいと思います。よろしくお願いします! ふぎと(以下、ふ):よろしく。 辞書の仕事 (岩波新書) 作者:増井 元 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2013…